「ワーナーブラザーススタジオの協力、ソルター社の音響設計を得て誕生した世界最高水準の音響空間と、画と音が自由自在に出会うネットワーク」
特徴は「ネットワーク」と「音響」。
ネットワークについて、東宝スタジオでは、撮影ステージとスタッフルーム、ポストプロダクションセンターがすべて光ファイバーで結ばれており、「撮影した映像を試写室に送り、すぐにラッシュ試写をする」「すでに撮影編集済みの前後のカットとのマッチングを確認する」といったことが可能になりました。
ネットワークはスタジオ外にも広がっています。早稲田大学の協力により、東京現像所、IMAGICA、オムニバスジャパン…国内の主なポストプロダクションが高速ネットワークで結ばれています。映像合成作業はますます複雑になっていますが、現像所、CGハウスの選択は製作者の自由です。そしてどこを選ばれても、ストレスのない環境を、高速ネットワーク網がご提供します。監督・プロデューサーも、スタジオとポストプロの間を行き来する必要はありません。「ラボから送られたデータを編集する」「CGハウスから送られたデータを大きなスクリーンで拡大映写する」・・・そういったことが可能な高速ネットワーク網をスタジオ内外に張り巡らせることで、ラボやCGハウスが隣にあるのと同じ環境を実現させました。
東宝のポストプロダクションのもうひとつの特徴、それが「音響」です。映画の音作りについて徹底的に考え抜かれた世界有数の「音響ポストプロダクションスタジオ」です。
特に「映画用ダビングステージ」をゼロから作り上げたのは、日本では50年振り。これまでのダビングステージは、モノラル音響時代に建てた建物。機材はマルチチャンネルになっても、「空間」はモノラル時代のままでした。
しかしステレオ、5.1チャンネル、7.1チャンネルと、映画音響は進歩し続けています。機材だけでなく、「空間」からマルチチャンネルに対応したスタジオが望まれていたのです。
基礎設計では、米ワーナーブラザーススタジオに協力をお願いしました。彼らから学んだのは「最高の音質と映像を再現できる環境の大切さ」。そこで、一般劇場を大きく上回る遮音性能・音響再現性能を追求することになったのです。
ワーナーブラザースからの紹介で、チャールズ・M・ソルター・アソシエイツに音響設計を依頼しました。ワーナーブラザース、20世紀フォックス、ディズニー・ピクチャーズ・スタジオ、ピクサー、ドリームワークス…ハリウッドのほとんどのメジャースタジオを手がけるスペシャリストです。こうして世界トップレベルの「音響空間」が実現できたのです。
新たに完成した「ポストプロダクションセンター1」と、ご愛顧いただいている「ポストプロダクションセンター2」。この2つのポスプロ施設により、デジタルだけでなく、フィルム仕上げにも対応できるハイブリッドな東宝ポストプロダクションセンターは、2つのダビングステージを使って、年間約40本もの映画用ダビングが可能となりました。
ダビングステージ1
世界最高水準の音響空間。ハリウッドレベルの音づくりが可能。
広さ284m
2・高さ7.2mの大空間。NC10の高い遮音性能。ミキシング・コンソールはマルチチャンネル音響に高い処理能力を発揮する「DFC Gemini(ディー・エフ・シー・ジェミニ)」。72フェーダー、音声入出力1,000シグナルパスは、ハリウッド大作クラスの音処理に対応できるパワーを持っています。
サラウンドスピーカーは両側壁に4つ、背面に4つ。5.1チャンネルはもちろん、7.1チャンネルも容易に再現可能。
スクリーンは10×4.5メートル。ミキサー、監督の座る席から最も見やすい画角を計算しました。
ダビングステージ1は多くの可能性を秘めたスタジオです。いい音はもちろん、悪い音でさえも、正確に再現します。皆様の作品で、この高い音響性能を実感してください。この空間が、多くのクリエイターの創造力を刺激するはず。そしてこれまでになかった力を引き出すはずです。ダビングステージ1は、皆様の作品のクオリティアップ、ひいては日本の映画音響のクオリティアップに貢献します。
アフレコステージ
アフレコ、ナレーション専用スタジオ。ミキサーが役者の演技を確認しやすい配置。
アフレコ専用の録音スタジオ。96m
2・高さ4.2mは20人以上のキャストが入っても充分な広さ。NC10の高い遮音性能を誇ります。
コントロールルームはスタジオを斜めに望む配置。ミキサー・監督が、役者のリップシンクを確認しやすくなっております。
ナレーション専用スタジオ、ウェイティングルームも併設。
アニメーション、洋画吹き替え版制作…様々なスタジオ録音の用途に対応します。
フォーリーステージ
効果音作成・録音スタジオ。様々な音出し素材をご用意。
効果音を録音する「フォーリーステージ」。
NC10の高い遮音性はもちろん、フォーリーアーチストのリクエストに応える「音出し素材」を集約しました。
多様な床面。床下が抜け、足音の音質を変えることも可能。破壊音を録るスペース、物を吊るして音を録れるフレームも設置しました。
更に小さな音を録音する「フォーリーブース」は、最も高い遮音性能のNC10以下。「マッチを擦る」など、微細な音録りが可能。
様々に工夫された道具が、奥深い効果音作りに役立ちます。
試写室
ダビングルーム1でつくられた音響を完全再現できる最高のレファレンス空間。
「大試写室」はオールラッシュや検定試写で最高のレファレンスを提供します。
広さ188m
2。座席数100。高品質スクリーンのスチュアート「ウルトラマット130」を採用し、横8.3×縦3.4メートル。
プロジェクターは、2KシネマDLPと35ミリフィルム映写機。フィルム検定はもちろん、将来4Kサイズでのデジタル検定にも対応可能なマシンを導入。そして3D映像のチェックにも対応します。
映写室はスクリーンの正面中央に配して、完全な水平映写を実現。歪みのない映像は、作品検定の画質確認に最適です。
音響もダビングステージ1と同じ。ダビングステージ1で録音した音が、検定品でも再現されていることを確認できます。
「小試写室」のスクリーンは170インチで、座席数は15。大きく、鮮明な画面で、デイリーラッシュにご利用ください。またネットワークを使って、編集リズムの確認や合成カットのチェックも簡単に行えます。拡大映写は大試写室でも可能です。
映像編集室
ハイディフィニション(HD)画質での編集が可能。持ち込み編集機対応の部屋もご用意
「編集室」はAVID編集システム付の部屋が4つ。編集機を持ち込める部屋が2つの計6室。
AVIDは全て「Nitris(ナイトリス)」。モニタ等の周辺機器もハイディフィニション対応の機種を揃えています。高画質で、ストレスの無い作業環境をご提供します。
全室が、光ファイバーでセンターサーバーと接続。データはローカルディスクに保存しても、センターサーバーに保存してもOK。
床は全てフリーアクセス。エディターのスタイルに合わせてレイアウト変更が容易です。
編集室5・6には、ファイナルカットなどの簡易編集機を持ち込めます。ネットワークやモニター環境は完備しているので、編集機さえ用意すれば、他と同じ仕様が実現します。
貸し出し用の編集機もAVID、ファイナルカットを用意。これを使い、編集室5・6で作業すれば、よりお手頃な値段で利用できます。
また、汎用性の高い効果音を約5万音源揃えました。編集中に「ガイドの効果音を付けてみたい」と感じた時、ネットワークを通じていつでも取り出せます。
サウンド編集室
5.1chをはじめとしたマルチチャンネル対応のサウンド編集室。
サウンド編集室は7室ご用意。そのうち3つの「サウンドデザインルーム」は、ダビングステージと同じ5.1chの再生環境です。小さくてもダビングステージと同じ。ここで完成度を高めれば、ダビングステージでの作業がとても楽になるはずです。プリミックスやダビングの日数を少なくするのにも役立ちます。
サウンドデザインルームと3つの録音スタジオには「ビデオサテライト」を導入。プロツールスを立ち上げながら、オフライン編集の映像を呼び出します。常に最新の映像を見ながら整音作業をおこなえます。
残りの4つの部屋は、2ch対応です。
創作意欲をかきたてる充実のアメニティ。
5.1chをはじめとしたマルチチャンネル対応のサウンド編集室。
外光を取り入れたロビーや、中庭での語らい、食事など作業環境にも配慮。軽いレクレーションもご用意しました。リフレッシュによって、新たなクリエイティビティが生まれるはずです。
既存のポストプロダクションセンターもリニューアル
5.1chをはじめとしたマルチチャンネル対応のサウンド編集室。
御愛顧頂いている既存のポストプロダクションセンター2も2011年頭にリニューアル。ポストプロダクションセンター1内のセンターサーバーとネットワークで結ばれているため、プロダクションセンター2の作業環境も大きく向上します。センタ-2にある編集室も、センター1編集室と同様の作業がおこなえます。
作品の完成に向かって、映像と音が融合する、最終工程のポストプロダクション。東宝スタジオの新しいポストプロダクションセンターは、自由自在なネットワーク機能と、世界最高レベルの音響設計によって、日本映画の仕上げ作業を大きく前進させるとともに、皆様の作品のクオリティアップに貢献します。
中規模ながら随所に工夫を施した充実のクリエイティブ・スクエア。
新№5ステージ・№6ステージは一昨年の№3・4ステージに続いて最新鋭の撮影ステージです。
鉄筋コンクリート造で、広さは№5ステージが約100坪(320m
2)、№6ステージが約150坪(475m
2)。中規模ステージながらキャットウォークまでどちらも8.2mと充分な高さを確保しました。ワイドな開口部は高さ5.5m×幅4.5m。外扉は防音シャッター、内扉は軽量な大戸で遮音性もNC25(空調停止時)をしっかりキープしました。
今までのステージ作りで学んだノウハウを生かして、ステージ内部は、空調ダクト等を壁内に押し込めてスクエアな空間を確保しております。ステージ内階段には踊り場を広く確保して吊りものやセットの水平を確認できますし、雨降らしが簡易にできるように排水溝も完備しています。
今回の特徴はステージ壁面とキャットウォークの下面や手すりにしっかりと配備された角材。二重でもライトの直吊りでも、さらに美術セットの固定でも迅速・容易にご利用可能です。
もちろん高速ネットワークも配備。所内外を繋いだネットワークを利用して映像・音声のやり取りも簡易におこなえます。
各ステージとも、前室としてのキャストルーム、モニター室、ストックヤードを併設しております。
これにより、東宝スタジオの撮影ステージは、全10ステージ体制となりました。